「作者とは何か?——300の別名義とCream Soda Museum」
私は、作者性の問題をテーマに、本名とは異なる別名義のアーティストをつくりだし、活動を行っている。
私が今までつくりだした別名義の数は300を超え、自分でも全ての名前を覚えている訳ではないほどである。
そのような本名とは異なる別名義を制作するという、このアイデアは、「作家とはどうあるべきか」という固定観念的な作家像に対する疑問に由来する。
それは、美術史における「作家性」という概念の歴史的変遷に関係している。ルネサンス期に確立された「天才芸術家」像、20世紀モダニズムにおける自己表現としての作家観、そしてポスト構造主義以降に提示された「作者の死」(ロラン・バルト)や「作者機能」(ミシェル・フーコー)などの議論。
作品を判断する上で、作品の良し悪しと同時に、それを下支えするコンセプト、そしてそのコンセプトを下支えする一貫性としての作者性。
これについて、ロラン・バルトやミシェル・フーコーによって、「1人の作者=一つの一貫性」という構図は批判されてきたが、依然として、現代美術の世界では、「1人の作者=一つの一貫性」であるべきという暗黙の了解のようなものがある。
必ずしもそうでなくても良いのではないか。
私は、複数の名前で作品をつくることによって、複数の一貫性を制作している。そのことによって、商品として作品が売れる可能性が少なくなったかもしれないが、逆説的に、批評性、つまり、作者性の問題に対する問題提起の重要性は増したように感じる。
また、それぞれの別名義のほとんどは私自身が設立したオンライン美術館Cream Soda Museumというウェブサイトにアーカイブされている。
Cream Soda Museumは、単に作品を保存し公開するためのウェブサイトではない。300を超える作者と作品を同じ場所に並置することで、「作者とは何か」という問いを、オンライン美術館という形式を通して展開するための場所でもある。